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早稲田大学公認 総合デジタル創作サークル 早稲田コンピュータエンタテインメント

三幕構成で物語の要素を考える

一人っきりのシナリオ班雀荘です。

今の流れならもうなんかこのまま
「おいしいうどんつゆの作り方」
とかでやってもいけるんじゃないかと。

いや、やらないし知らないけど。


今回はシナリオ班っぽいことをしようと思います。


三幕構成の導入[レッスン1、妙な期待をするな]


「三幕構成」というものがあります。
物語を「序盤、中盤、終盤で構成される」という考えで、
洋画なんかはこの三幕構成で主に考えられているらしく
2時間映画で考えると「序盤30分」、「中盤1時間」、「終盤30分」
という形式になっているのがほとんどだとか。

今回はこの「三幕構成」で物語の構築を大雑把にマトリックスなどを引き合いに
いろいろ考えていきます。
(きっとみんな知ってるだろう)


多分これをやっていくと、
いい感じにジャンプのバトルもの読み切りみたいになる気がします。

第一幕[謎の主人公・・・一体何者なんだ!]

第一幕では主人公を取り巻く状況などを
認知してもらうことになります。

そういうわけで、
主人公が「何者」で「何を望んでいるのか」
つまりは「何がしたくて・欲しくて」「何がいらないのか」
を考え、描写しましょう。

主人公の動機は物語のゴールを定めることにもなるので、
とても大事な要素です。
「欲しいもの・望み」があるから彼は
「日常」から「非日常」への変化の「きっかけ」に
飛び込むわけです。
もし主人公が特に現状に不満を持っていないのなら、
「きっかけ」に飛び込んでくれるわけがありません。
ここをおろそかにすると、後々困ります。割と。

もし必要なら「主人公を後押しする・引き上げる人間」とかを設定します。
主人公の欲求が今の生活とは違うもの、
漠然とした例えば「充実感」を求めている場合、
この人物がきっかけを与えることとなります。

マトリックスは後者に該当します。
ネオは凄腕プログラマーで「望み」とか大してないけど
「もやもやとした現実への違和感を感じつつ、
ぐったりと毎日を送っているところに『メール』が届いた」
みたいな感じで動き始めました。
この「メール」の送り主がネオを押し上げてくれる存在です。
この時点でネオはただの一般人ですからね。
「きっかけ」に飛び込む感じじゃないですね。


ともかくこうして主人公が
第二幕で「非日常」に突っ込んでいきます。

第二幕[「敵って?」「ああ!!」]

主人公は「望み」を持っていますが、
当然それは簡単に手に入ってはいけません。
手に入ったら物語は終わってしまいます。

そこで敵が必要になってきます。

この敵は物語を引き伸ばす要因みたいなもので、
物理的な敵や精神的な葛藤などです。
悪者でもなくとも、
例えば「ローマの休日」ならあのお姫様が敵なわけです。
彼女の存在が主人公(新聞記者)の
「スクープで大儲け」という目標において
「彼女への恋ごごろ」みたいな感じで立ちはだかります。

マトリックスのネオなんかは、
この第二幕でやっと「望み」を手に入れます。
「ベース基地の仲間」がそれ。
この仲間を守るために彼はわざわざ困難(エージェントとか)に
立ち向かうのですから。
敵はエージェントやなんか基地を探してる生き物とかですね。

第二幕としての物語要素はおそらくこれらを通しての
「非日常」の理解とその中での主人公の方向性を決めるのがメインになると思います。

マトリックスなら基地での食生活やどのようなシステムなのか、
この状況はどういうことなのか。
敵はどういう奴でどのくらい強いのか。
というのがいろいろな描写を通して説明されますね。

さて、こうしてモーフィアスがさらわれるなり
敵の総攻撃が始まったり
お姫様の帰りの期日が来てしまうなどして
主人公が抜き差しならない状況になって第三幕に入ります。


ここで何か自分で作った展開に疑問符がつくようなら第一幕を見直したほうがいいようです。

第三幕[望みを言え・・・。主人公が支払う代償はたった一つ・・・。]

クライマックス。
主人公は最終的な「望み」に向けて全力アプローチしちゃうわけです。

そして死ぬ。
精神的にないし物理的に。
ここの主人公へのいじめ具合は
結構作品評価とかに関わってくる気がします。
いかにして希望の芽を潰していくか、
視聴者・読者の思考を誘導するかなどが腕の見せどころかと。

そして生まれ変わる。

ジャンプで言うと主人公が「もうだめだ・・・」とか言って、
マトリックスだとネオがスミスにぼこぼこにされる。

でもこの後のことはみなさんお察しつくでしょう。

主人公に「何かの閃き」や「何かが訪れる」などして
逆転勝利を収める。
ジャンプなら可愛い女の子や友達を守ったりでき、
ネオならエージェント・スミスを頭突きでぶっ飛ばし、
ローマの休日」ならお姫様に「ローマは素晴らしい街でした」
と言われる。
敵の排除。心が打ち勝つ。一歩を踏み出す。

「望み」が叶う。大勝利。

主人公は何かを得て「日常」に戻れるでしょう。


もし自分で書いていて、このシーンに疑問符が湧いてしまった場合、
それは第一幕に問題があるようです。
それは主人公にとってそこまで必要だったのか?
その主人公は本当にそんなことするのか?
主人公の動機ってなんだっけ?
今一度主人公像を見直してみましょう。

最後[おばあちゃんが言っていた]

三幕構成は三角ベースだと。

どういうことかというと
「1,2塁間が長い」、
そして「最後はホームベース」に
帰ってくるということ。
主人公は必ず最初の位置に戻ってくる。
しかしそこには栄光の1点が追加される。

このイメージが基本だそうです。
しかしまあ、世の中いろいろな映画があるわけで
ホラーなんかはこれにあまり沿わないだろうし
(みんな生きたいと思ってる)
文学的に感情なんかを描写したり。
基本は基本で、
それ以上でもそれ以下でもないというところでしょうか。

そういえば、
マトリックスのネオみたいな巻き込まれ型主人公、
最近の学生系主人公に多い気がします。
少年誌やラノベなんかにありそうなイメージですね。

この文章を最後まで読んだあなた、
今度からジャンプの読み切りを読むときに
こういうこと気にしながら読むと
「これいまいちだけど、もしかして『動機』が弱いからじゃね?」
ってなるかもしれないぞ!


この記事を書くのに参考にしたもの
Togetter「chimumu」さんのまとめ
ここで書いたことが細かくいろいろ書いてあったり、映画の技法をわかりやすく語ってくれていたりします。